第88回全国高校野球選手権大会の決勝再試合は昨日午後1時00分から甲子園球場で行われた。
夏3連覇を狙う駒大苫小牧と悲願の初優勝を目指す早実の戦いは月曜日にもかかわらず球場を埋め尽くす5万人の大観衆が見守る中、静かに始まった。
1回に船橋の中前打で先制した早実は2回にも1点を追加し、2:0とした6回、駒大苫小牧の1番打者三谷に左中間へ運ばれ1点差となった。その裏、早実は斉藤投手の女房役8番白川が左翼フェンス直撃の適時2塁打を放ち再び2点差として終盤を迎えた。
7回裏2死2塁で早実の主将4番後藤が田中投手の投げた初球を左前へ鮮やかにはじき返し、値千金の貴重な追加点を挙げた。
4:1で迎えた最終回、駒大苫小牧は先頭の2番三木がしぶとく中前へ落として出塁し、続く3番中沢は唯一斉藤の甘く入ったスライダーを左中間スタンドに運んであっという間に1点差。
この時点でまだ無死で4番以降一発のある打者が並んでいる。また同点、あるいは延長があるのかと一瞬そうした思いが頭をよぎる。
しかし、冷静沈着な早実のハンカチ王子斉藤投手、ここは落ち着いて4番本間、5番岡川を打ち取り2死。
そして迎えるのは6番田中。運命のイタズラと言うか甲子園の女神は最後まで演出を忘れない。優勝をかけてここまで24イニングスの死闘を演じてきた駒大苫小牧のエース田中と勝負する場面をここでセットするのだ。そして斉藤の投げたこの夏甲子園948球目が捕手白川のミットに吸い込まれ、田中のバットが空を切った。
その瞬間、駒大苫小牧3連覇の夢は消え、早実の夏甲子園初優勝が実現した。試合後のインタビューで和泉 実(44)監督は「88回待ちました。待ってその歴史で勝ちました。」と答え、早実野球部創部105年の伝統と歴史が勝たせてくれたと感慨深そうに語った。
しかし、24イニングス戦って僅かに1点差という最小得点差しかつかない駒大苫小牧と早実の戦いは球史に残る決勝戦となり、田中、斉藤の投げ合いは後世へ語り継がれることだろう。
甲子園の女神はどうしてもどちらかに軍配を上げねばならず、こうした試合内容で幕引きを考えたのかもしれない。
今は両校の選手にゆっくり休んでもらいたいと思うが、甲子園の女神にもお疲れ様と言いたい。
平成18年(’06)の夏甲子園は全てにおいてこれまでの大会を凌ぐ内容となり、高校野球ファンの脳裏に焼きついて離れない強烈な印象を残して幕を閉じた。